オンラインセミナーの著作権について解説!引用や録画は大丈夫?
オンラインセミナーが活発に開催されている一方、コンテンツ作成に使う資料などの創作物やコンテンツそのものの著作権について、正しく理解できている方は少ないのではないのでしょうか。
オンラインセミナーでは、主催者側も視聴者側も「知らぬ間に著作権侵害をしていた」というケースが起こり得ます。
この記事では、オンラインセミナーの著作権について、主催者側と視聴者側の両方の視点で解説します。オンラインセミナーを普段から主催している企業の担当者や、セミナー受講の機会が多い視聴者の方は、ぜひご覧ください。
オンラインセミナーに関わる前に知っておくべき著作権の基本
そもそも、著作権とはどういった権利を指すのでしょうか。オンラインセミナーでの事例を見る前に、まずは著作権の基本をおさえましょう。
著作権には2種類ある
著作権には、「著作権」と「著作隣接権」の2種類があります。それぞれ詳しく解説します。
著作権
著作権とは、著作物を保護する権利を指します。
自分の考えや気持ちを作品として創作したものを「著作物」、その著作物を創作した人が「著作者」、そして著作者に対して法律のもとに与えられる権利を「著作権」 といいます。
著作物について、もう少し詳しく解説します。文化庁では、著作物を次のように定義しています。
著作物について
著作権法で保護の対象となる著作物であるためには,以下の事項をすべて満たすものである必要があります。
(1)「思想又は感情」を表現したものであること
→ 単なるデータが除かれます。
(2)思想又は感情を「表現したもの」であること
→ アイデア等が除かれます。
(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること
→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。
(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること
→ 工業製品等が除かれます。
具体的には,小説,音楽,美術,映画,コンピュータプログラム等が,著作権法上,著作物の例示として挙げられています。
その他,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,編集著作物として保護されます。新聞,雑誌,百科事典等がこれに該当します。
引用:文化庁HP「著作物について」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu.html
つまり、著作物は「人が自分の思想をもとに、文芸・学術・美術・音楽などで表現したもの」と言い換えることができます。具体的には、画像や音楽はもちろん、新聞や雑誌、その延長線上にある講演やオンラインセミナーも著作物にあたり、著作権が適用されます。
著作権制度は、苦労して著作物を生み出した著作者の努力に報いることで、著作者の権利を守りながら日本の文化の発展を促すことを目的としています。
著作隣接権
著作隣接権とは、著作物を提供する際に重要となる制作協力者に発生する権利のことです。
著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演家,レコード製作者,放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利
引用:文化庁HP「著作隣接権」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosaku_rinsetsuken.html
制作協力者は著作物を創作していないため、著作者ではありませんが、伝達に際して創作に準ずる活動をしたとみなされ、著作権に準じた「著作隣接権」が付与されます。
著作権の例外
著作権法では、一定条件を満たすとき、著作者の許可なく著作物を利用できる制限規定を設けています。次のケースでは、著作権侵害にあたらないことがあります。
- 私的利用のための複製
- 学校や教育目的での使用
- 非営利目的での使用
しかし、録音や録画を含むデジタルコンテンツの複製行為については、著作者に対して著作権料を支払わなければならない場合があります。また、 違法アップロードされたコンテンツを違法なものだと知りながらダウンロードをすることは、著作権の侵害 に該当します。
この他にも、著作権が認められる複雑な基準やさまざまな判例があります。著作権侵害が心配であれば、あらかじめ著作者に確認をとっておきましょう。
改正著作権法第35条運用指針│SARTRAS 授業目的公衆送信補償金等管理協会
オンラインセミナーで著作権侵害を避けるポイント(主催者)
オンラインセミナーの著作権には、主催者側と視聴者側がそれぞれ意識すべき考え方があります。まずは、オンラインセミナーの主催者が著作権侵害を避けるために意識したいポイントをご紹介します。
「書籍・論文・Webページ」を引用したい
書籍や論文などを資料として使う場合、引用の形をとれば、基本的に著作権侵害にはあたりません。
ただし、引用をする場合は次の4つのルールを守るようにしてください。
- 一次情報からの引用
- 引用符などを用いて本文と引用部分を明確に区別する
- 引用範囲は必要最小限に抑える
- URLなど引用元を明示する
引用の範囲を超えてしまいそうなときは、著作者に連絡を取って了承を得た方が良いでしょう。
「画像・音楽」を使用したい
オンラインセミナーでは、著作権フリーの画像や音楽を使用するのがおすすめ です。著作権者が著作権を行使していないため、素材の使用料を払う必要がありません。
ただし、著作権フリーの素材には、商用利用や素材の加工の制限をしている場合があります。使用する際は、素材サイトの利用規約を必ず読みましょう。
どうしても著作権フリーでない画像や音楽を使いたいのであれば、JASRAC(日本音楽著作権協会)などの権利団体から利用許可を得る方法があります。
著作権侵害が心配であれば、自分で撮影した写真やオリジナルの音楽を用いると安心です。
非営利でも無断使用はNG
著作権法の例外として、著作物を非営利の演奏や上映で使用することが認められています。しかし、「非営利の公衆送信」は著作権法の例外として認められていません。
オンラインセミナーやライブ配信は、法的に「公衆送信」に該当 します。「非営利のオンラインセミナーを開催している」というスタンスがそもそも意味をなさないため、法的には著作物を営利目的で無断使用したと判断されてしまいます。
オンラインセミナーで著作物を使用するには、原則として著作者に了承を得る必要があると理解しておきましょう。
コロナ禍における法改正
コロナ禍の2020年4月、著作権法の一部改正がありました。著作物の取り扱いをスムーズにするために、 教育分野に限りオンライン上で著作物の利用がしやすくなりました 。
公民館や図書館などの社会教育施設などは、教育分野に該当する可能性があります。しかし、予備校や企業の社員研修といった営利目的のオンラインセミナーでは、依然として許可を得て使用する必要があります。
もし非営利の教育分野に該当するのであれば、事前に許諾を得なくても事後的に補償金を支払うだけで、一部の著作物が使用できます。オンラインセミナーを行う際は、ぜひチェックしてみてください。
オンラインセミナーで著作権侵害を避けるポイント(視聴者)
オンラインセミナーを録音・録画して、後から見直そうと考えることもあるでしょう。しかし、実は私的利用であっても著作権侵害にあたるケースがあるのをご存じでしょうか。
ここでは、オンラインセミナーで視聴者側がおさえておきたい、著作権侵害を避けるためのポイントをご紹介します。
オンラインセミナーは著作物に該当する
オンラインセミナーの資料やプレゼン、音声などはすべて主催者側の著作物に該当します。
セミナー中の講師などによる発言内容は、「言語の著作物」として著作権法が適用される著作物にあたります。そのため、音声などの形に残らないものであっても、著作者に無断で使用することはできません。
もし オンラインセミナーのコンテンツを利用したいのであれば、主催者や登壇者の許可が必要 です。
録画やスクショは許可を取ってから
元々の配信コンテンツが著作権法を侵害している場合、私的利用を目的としていても録音や録画をすると著作権法に抵触する可能性があります。つまり、 配信されているオンラインセミナーが著作権法に違反している場合、録画やスクショで保存することは、自分一人で視聴するケースでも法に触れる可能性 があります。
著作権法に触れているという事実を知らずに録画などをしていると、著作権侵害に問われないケースもありますが、セミナー主催者に許可を取ってから録画や録音、スクショを取る方が良いでしょう。
内容を無断で投稿するのはNG
オンラインセミナーの内容は著作物にあたり、著作者である主催者や登壇者が著作権を保有しています。そのため、 セミナーの内容を無断でSNSに投稿したり、セミナーの様子をキャプチャしてそのまま配信したりする行為は、著作権の一部である「公衆送信権」を侵害する明確な犯罪行為 にあたります。
もし投稿を考えているのであれば、録画などと同様に、セミナー主催者に確認すべきです。
オンラインセミナーは著作権に注意しよう
創作物は著作権で保護されます。オンラインセミナーを配信する際に使う画像や音楽も著作権で保護されている場合があり、主催者は基本的に無断で使用することはできません。
また、視聴者も著作権について理解しておく必要があります。私的利用が目的であったとしても、セミナーを無断で録音・録画することは法律違反になる可能性があります。
オンラインセミナーにおいては、主催者も視聴者も、お互いに著作権を意識した行動をとりましょう。