イメージ オンライン接客とは?サービスの概要や導入事例を紹介

オンライン接客とは?企業の導入メリットと成功事例

新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面での接客に代わる手段としてオンライン接客の普及が進んでいます。「興味はあるけど実際のメリットや効果ってどうなの?」「具体的にどうやって活用すればいいの?」とお困りではないでしょうか?

そこでこの記事では、オンライン接客の概要やメリット、導入の際の課題、成功事例をご紹介します。オンライン接客の導入に興味を持たれている方はぜひ参考にしてください。

目次 閉じる

オンライン接客とは

イメージ オンライン接客

オンライン接客とは、 Web会議ツール・チャットツール・SNSなどを使って非対面で行うオンラインでの接客サービス の総称です。

感染症対策として有効な上、インターネットを利用するため場所の制約がないことから遠方の顧客にも接客を提供できるということで、新規顧客の開拓手段としても普及が進んでいます。

上手く活用することで顧客満足度・顧客単価の向上やリピーター獲得などに期待できるため、アパレル・プライベートレッスンなどBtoCサービスのほか、法人向けの商談など、さまざまなビジネスシーンで活用されています。

オンライン接客が普及してきている背景や種類、活用方法について詳しく見ていきましょう。

オンライン接客の普及が進んでいる背景

MS&Consultingの調査によると、オンライン接客の利用経験者は 約6人に1人(17.2%) となっています。ただし、これはおそらくWeb会議システムを使ったオンライン接客に限定されたもので、 チャットツールやSNSを使ったオンライン接客を含めると、利用率はさらに高くなります。 

オンライン接客の普及は 2020年から始まったコロナ禍の影響 が非常に強いです。不要不急の外出を控える新しい生活様式が一般的になり、これまでのような 対面での接客が難しくなったことで爆発的に普及 しました。

「店舗に行かなくても接客を提供できる・受けられる」というメリットはコロナ禍に関係なく魅力的で、今現在も「顧客とのタッチポイントの増加」「新規顧客の獲得」などを目的とした普及が進んでいる状況です。

オンライン接客の種類

オンライン接客の種類は、使用するツールによって主に3つに分かれます。

<代表的なツール>

ツールの種類 ツール・サービス例 運用方法例
Web会議ツール Zoom・Google meet など Webサイトに予約フォームを設置。予約を入れてもらい、所定の日時にWeb会議ツールで接客。
チャットツール・チャットボット GENIEE CHAT・ChatPlus など サービスサイト・ECサイトなどにチャットを埋め込み接客。有人対応・無人対応どちらもある。
SNS LINE・Instagram など ライブ配信を使い顧客とリアルタイムでコミュニケーションを取る。
LINEで商品に関する質問に回答する。

Web会議ツール

 Zoomなど、Web会議ツールのビデオ通話でオンライン接客 を行う方法です。

高画質・高音質のビデオ通話で、ストレスなくコミュニケーションがとれます。お互いの表情を見ながらリアルタイムで接客を行えるため、 対面に近い丁寧な接客 が可能です。無料で使えるツールもあり、コストパフォーマンスに優れています。

オンライン接客をZoomで行うメリットとデメリットを紹介

チャットツール・チャットボット

 有人のチャットツールやAIのチャットボットを利用した方法 です。

有人のチャットは手間がかかりますが、顧客の要望に柔軟に対応できるため、 顧客満足度が高まりやすくなります 。AIを使ったチャットボットは導入にコストがかかりますが、人手が不要のため、 人件費やスタッフの作業負担軽減 が狙えます。

SNS

 LINEやInstagram、Twitter、FacebookなどのSNS を使ったオンライン接客 も可能です。Instagramのライブ配信を使ったライブコマースや、LINEで商品に関する質問に答えるなど、 臨場感のある接客で顧客の購買意欲を高められます。 

顧客が普段使っているSNSサービスを利用するため、 ツールやアプリを登録する手間がかからずハードルが低い点がメリット です。

この他にもVR技術を使い、バーチャル空間に設置した店舗で接客する方法などもあります。

LINEのオンライン接客とは?メリットから導入方法まで解説オンライン接客ツールとは?比較ポイントから機能の違いまで解説!

オンライン接客の活用例

オンライン接客は、商品を紹介するために活用するパターンと、オンライン接客そのものがサービス(商品)になるパターンがあります。双方で考えられる使い方には以下のようなものがあります。

活用例1:商品を紹介するための活用

イメージ_商品を紹介するための活用

  • ジュエリー:着用イメージの確認や各種相談の受付(コンシェルジュサービス)
  • アパレル:ビデオ通話で顧客のコーディネートを提案する
  • コスメ:肌やメイクの悩みのカウンセリング
  • 不動産:内見をオンラインで提供する

活用例2:オンラインでのサービス提供

イメージ_オンラインでのサービス提供

  • ヨガのレッスン
  • パーソナルトレーニングや競技スポーツのレッスン
  • 英会話のレッスン
  • 楽器・絵画などのレッスン
  • 家庭教師

オンライン接客導入で得られるメリット

オンライン接客を導入すると、幅広いメリットが期待できます。ここでは、ECサイトと実店舗に分けてオンライン接客を導入するメリットを解説します。

ECサイトにオンライン接客を導入するメリット

イメージ_ECサイトにオンライン接客を導入するメリット

 遠方にいながらでも、対面と同等のコミュニケーションが取れる 点がメリットです。

ECサイト単体での販売は一方向的な情報提供になりがちですが、オンライン接客を利用した販売では、双方向かつリアルタイムの商品説明が可能です。店舗から顧客へ伝えられる情報の量が増えることで購買意欲を増加させたり、表情や反応を見ながら臨機応変に対応できたりするようになります。

 顧客体験(CX)の質が高まり、顧客エンゲージメントも向上。 その結果として、 コンバージョン率や顧客単価の上昇 も見込めます。

実店舗がオンライン接客を導入するメリット

イメージ_実店舗がオンライン接客を導入するメリット

実店舗がオンライン接客を導入するメリットは以下の通りです。

  • 感染症対策になる
  • 顧客の利便性が上がる
  • 商圏を拡大できる
  • 非対面ニーズに対応できる
  • 顧客を待たせることがなくなる
  • 人材不足の解消・人件費の削減ができる

感染症対策になる

オンライン接客では スタッフやオペレーターが顧客と対面しない ため、3密状態を避け、 感染症対策を実現することが可能です。商品やサービスを利用する顧客だけでなく、 自社のスタッフの安全も守る ことにつながります。

オンライン接客を導入すると、「あのブランドは感染症対策をきちんとしている」と口コミが広がる可能性があり、顧客からの信頼を得やすくなります。

顧客の利便性が上がる

 わざわざ店舗まで足を運ばなくても利用できる ようになり、顧客の利便性が上がります。

また「対面よりもオンラインの方が相談しやすい」「商品に興味が沸いた時だけ接客を受けたい」といったニーズにも対応でき、 幅広い層に利便性の高さを感じてもらえる でしょう。

商圏を拡大できる

オンライン接客を導入すると 場所の制約がなくなり、遠方の顧客にも接客を提供できる ため、商圏を全国に拡大できます。

これまで「近くに店舗がないから」と店舗利用を諦めていた顧客に対しても接客が可能になり、新規顧客の獲得につながります。オンライン接客では、顧客はまるで店舗に足を運んでいるかのように感じながら、スタッフからの接客を受けることが可能です。

スタッフと会話しながら商品を検討したい人や接客を重視している人はオンライン接客を魅力的に感じる可能性があり、そのような顧客をターゲットにオンライン接客を周知すれば、さらなる顧客を獲得できるかもしれません。

非対面ニーズに対応できる

コロナ禍以前から、 「そもそも対面でのコミュニケーションが苦手」「店員に声をかけるのが苦手で店舗の利用を控えている」 といった非対面ニーズは存在します。オンライン接客はこのような非対面ニーズにも対応できます。

顧客を待たせることがなくなる

事前に日時を予約するタイプのオンライン接客では、顧客は休憩中や隙間時間など、 自分の都合に合わせて好きなタイミングで接客を受けられる ため、 スタッフやカウンセラーの手が空くのを待つ時間がなくなります。 

これにより機会損失を防げる点が企業(店舗)側の大きなメリットです。

人材不足の解消・人件費の削減ができる

対面の接客では、接客できるのは実店舗に出勤しているスタッフだけです。しかし、オンライン接客では、各店舗で通信環境を整えれば、 どの店舗からでも接客ができます 。従業員が不足している店舗の接客を他の店舗が対応すれば、人材不足を解消できます。

また、スタッフは遠隔で接客できるため、一人で複数の店舗を受け持つ体制を作ることができます。接客を効率化でき、人件費の削減につながります。

以下の記事でもオンライン接客のメリット・デメリットについて解説しているのでご一読ください。
オンライン接客のメリット・デメリットを詳しく解説!

オンライン接客導入において課題となるポイント

イメージ_オンライン接客導入において課題となるポイント

オンライン接客導入の課題となるポイントは、次の3つです。

  • オンラインの特性への対応
  • 安定したネット環境の用意
  • 顧客にツールの使い方を理解してもらう

それぞれ詳しく解説します。

オンラインの特性への対応

オンライン接客ではWeb会議ツールや専用のツールを使ってビデオ通話をするため、お互いの顔は見えていますが、 対面と全く同じわけではありません 

画面やマイク越しに伝わる情報は対面よりも少なく、 声のトーンやしゃべるスピードに注意 しながら話す必要があります。また、相手のデバイスが違う点を考慮して 大きな文字の資料を用意 したり、 相手の理解度をこまめに確認 したりと、相手の立場に立った進行も意識しなければいけません。

オンライン接客を成功させるには、相手の理解度を高めるコツを押さえるのが重要です。以下の記事で、オンライン接客のコツを導入編と接客応対編に分けて詳しく解説しているので参考にしてください。
オンライン接客を成功させるコツとは?今すぐ実践できるポイントを解説

安定したネット環境の用意

オンライン接客では、 映像や音声が乱れたり途切れたりすることを防ぐために、安定したインターネット回線を用意する 必要があります。

声がうまく聞き取れない、映像が途中で止まるといったトラブルは顧客にストレスを与え、満足度を大きく下げてしまいます。 商品やサービスの内容を正しく伝えられないのは機会損失にもつながり 、顧客が離れてしまう原因にもなりかねません。

回線が頻繁に途切れるのであれば、光回線を契約するのをおすすめします。また、無線で接続している場合は、有線で接続すると通信が安定しやすくなります。

顧客にツールの使い方を理解してもらう

顧客の中には、 インターネットやさまざまなツールに詳しくない人も少なくありません 

ツールの使い方をわかりやすく解説した ユーザーガイドなどを用意 して、顧客が迷わずツールを使えるようにしましょう。Zoomなどの有名なツールではなく、あまり使われていないツールや最新の技術を使ったツールは、特に詳しいマニュアルが必要です。

ツールの使い方は、接客に入るまでに理解してもらうのが理想です。オンライン接客のページにマニュアルのリンクを貼るなどして、事前に理解してもらえるようにしましょう。

業種別オンライン接客の成功事例

オンライン接客を導入した企業の成功事例を、業種ごと11個紹介します。さまざまな業界の事例を紹介しているので、自社にオンライン接客を導入する際の参考にしてみてください。

Faber Company(Webマーケティング)

イメージ_Faber Company(Webマーケティング)

株式会社Faber Companyは、SEOツール「ミエルカ」を提供する企業です。オンライン接客ツール「VIVIT LINK(ビビットリンク)」を導入し、無料トライアルを申し込んだリードや資料をダウンロードしたリードとのアポイント取得率を大幅改善しました。

アポイント取得率が対比140%と大幅改善

株式会社Faber Companyでは元々以下のようなフローでアポイントを取っていました。

  1. スタッフが予定を確認
  2. オンライン接客のURLを発行
  3. リードに連絡

リードに連絡をするまでに時間がかかるため、購買意欲を低下させる要因になっていました。これを、VIVIT LINK(ビビットリンク)の導入によって改善しています。

VIVIT LINK(ビビットリンク)は、オンライン接客の日程調整を簡略化できるツールです。 リードへの連絡がすべて自動化され、スピーディーな対応ができるように なり、その結果 アポイントの取得率が対比140%と大きく改善 しています。

時間効率が向上し生産性もアップ

それまで 1件あたり10分程度かかっていた日程調整等の問い合わせの処理 は、VIVIT LINK(ビビットリンク)導入後に 1件あたり数秒で完了するように なりました。株式会社Faber Companyでは月間で800件以上のリードを処理しているため、 チームで1日当たり4時間の時間削減 につながっています。

株式会社Faber Companyの事例について、詳しくは以下のインタビュー記事をご覧ください。
https://www.vivitlink.com/case/fabercompany

ベイクルーズ(アパレル)

引用:ベイクルーズ
引用:お家でショップスタッフに相談ができる!Online Styling Service|BAYCREW’S STOREhttps://baycrews.jp/news/detail/2915

JOURNAL STANDARDやIENAなどのブランドを展開する株式会社ベイクルーズは、新型コロナウイルスの感染拡大以前よりオンライン接客に力を入れています。

外部サイト:ベイクルーズのファッション通販 – BAYCREW’S STORE 公式サイト

オンラインショップと併行してオンライン接客サービスを展開

ベイクルーズでは、 パーソナルコーディネートライブコマースチャットを使った相談オンライン試着 などデジタル接客に幅広く取り組んでいます。

特にZoomを使った「Online Styling Service」は、店舗のファッションアドバイザーに直接相談ができる人気のサービスです。気になった商品のサイズ感や質感、コーディネート方法などを気軽に相談できます。

手持ちのアイテムとのコーディネートを相談できる

「Online Styling Service」では、手持ちのアイテムとのコーディネートをスタッフと相談することもできます。 自宅で受けられるオンライン接客のメリットをうまく活かしたサービス といえるでしょう。

オンライン接客サービスは幅広い端末から利用可能で、予約方法や利用の手順も簡単なため、顧客満足度の向上につながっています。

アパレル業界のオンライン接客については以下の記事も併せてご覧ください。
アパレル販売で注目されるオンライン接客!企業事例・メリットまで解説

オルビス(化粧品)

イメージ_いつでもどこでもORBISオンラインカウンセリング
引用:いつでもどこでもORBISオンラインカウンセリングhttps://www.orbis.co.jp/contents/feature/online_counseling/

オルビス株式会社は、化粧品業界の中でをいち早く導入したことにより話題となりました。新型コロナウイルス感染症の拡大とともにはじめた 「いつでもどこでもORBISオンラインカウンセリング」 の利用者は、2020年5月で月38件でしたが、2021年2月には月174件まで増加しています。

外部サイト:化粧品・スキンケア・基礎化粧品の通販|オルビス公式オンラインショップ

専属のビューティーアドバイザーに相談できる

オルビスのオンラインカウンセリングは、予約制と即時相談の2通りがあります。予約制では最大45分話すことができ、 お肌の悩み相談やメイク方法のアドバイス商品の使い方を丁寧にレクチャー してくれます。

即時相談では最大15分の通話ができ、今使おうとしている商品の使い方やちょっとした疑問をすぐに解決可能です。軽い相談から本格的なお悩み解決まで、顧客のニーズに幅広く対応しています。

顧客満足度96%の秘密

オルビスが実施した利用者アンケートでは、 満足度96% と非常に高い数値を出しています。この満足度の理由の一つとして、 カウンセリング終了後に送るサンキューメール があります。

担当したビューティーアドバイザーがアドバイスの内容や商品の情報などをひとつずつ手入力して送っており、顧客に気持ちが伝わりやすく、高評価につながっていると考えられます。

化粧品業界のオンライン接客については以下の記事も併せてご覧ください。
オンライン接客はコスメ販売でも効果的?メリットから企業事例まで紹介

東急リバブル(不動産)

不動産業界にも、オンライン接客が導入され始めています。東急リバブル株式会社は、2020年5月よりビデオ通話によるオンライン接客を始めました。各種相談や内見など、幅広くオンライン接客を活用しています。

外部サイト:【東急リバブル】不動産の仲介・売買 公式サイト

遠方でも相談できる利便性が好評

新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、東急リバブルは緊急事態宣言を受けて2020年4月に全店舗の店頭営業を休止しました。対面での接客ができなくなった状況で代替手段として選ばれたのが、 Google Meetを活用したオンライン接客 でした。

 新規顧客への対応や商談中の顧客とのやりとり に、オンライン接客が活用されています。遠方にいても相談できる利便性が評価されています。

売却の相談や内見・税理士や弁護士への相談まで

東急リバブルのオンライン接客は、次の場面で活用されています。

  • 自宅の査定や売却に関する相談
  • 空き物件の内見
  • 営業担当との商談、税理士や弁護士との相談

自宅の査定や空き物件の内見では、 ライブ中継を利用して家の状態をチェック することが可能です。

なお、東急リバブルでは在宅勤務を積極的に導入しており、対面による接客の機会を減らしています。 顧客の利便性を高めつつ、社員の働きやすさも損なわないよう配慮 しています。

不動産業界のオンライン接客については以下の記事も併せてご覧ください。
不動産業界でのオンライン接客を成功させるポイントを紹介

三越伊勢丹(百貨店・デパート)

大手百貨店の中で、いち早くオンライン接客を取り入れたのが三越伊勢丹です。2017年に「デジタル時代に合わせたビジネスモデルの変革」「デジタル関連の新事業の創出」といった経営方針を打ち出し、デジタルシフトを進めてきた三越伊勢丹の取り組みを紹介します。

外部サイト:三越伊勢丹オンラインストア 【公式】

「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を提供

2020年11月、三越伊勢丹は自社開発した「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」をリリースしました。対象店舗は東京都内の4店舗のみ(2021年11月現在)ですが、さらなる拡大が予定されています。

 アプリではチャットやビデオ通話で接客を受けられるだけでなく、商品の決済や配送の手配まで済ませられます。 また、すべての商品に対応しているわけではなく、顧客から引き合いのあった商品だけを扱うなど、効率的な運営をしている点が特徴です。

確実に購入につなげるための工夫

確実に商品の購入につなげるために、アプリには様々な工夫が盛り込まれています。まず ビデオ通話で商品の細部まで見せることで、利用者の商品に対する不安を取り除きます。 疑問点にもリアルタイムで丁寧に回答していくことで「購入しない理由」を解消していくのです。

 オンライン接客の最中であっても購入手続きを進められる ため、利用者が「買いたい」と思ったタイミングを逃しません。また商品は利用者の専用カートに投入されるので、買い忘れを防ぎやすい仕組みとなっています。

若い年代と地方の顧客にリーチできた

「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」の導入により、三越伊勢丹は従来アプローチしにくかった顧客を取り込むことに成功しました。アプリから商品を購入した顧客のうち、首都圏以外が約半数を占めており、アプリは 地方在住の顧客とのつながりを深めるのに役立っています。 

また、百貨店の店舗を訪れる顧客は、高めの年齢層が中心ですが、店舗利用顧客としては少ない 20代もアプリでは約10%と高い割合 であるというデータがあります。三越伊勢丹は、オンライン接客によって従来の接客を代替するだけでなく、新たな顧客層の開拓に成功したといえるでしょう。

ノバレーゼ(ブライダル)

引用:WEDO│NOVAREESE

引用:WEDO│NOVAREESEhttps://www.novarese.co.jp/wedo/

ブライダル業界大手企業のノバレーゼは、2020年5月からオンライン接客の導入を本格的に進めました。「結婚式場選びでは現地に足を運ぶのがあたりまえ」という常識に挑んだノバレーゼの事例を紹介します。

外部サイト:株式会社ノバレーゼ|NOVARESE 公式サイト

新型コロナウイルスの影響が大きかった結婚式業界

新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる業界に大きな影響を及ぼしました。その中でもとくに深刻な影響があったのがブライダル業界です。政府による緊急事態宣言もあり、結婚式を中止または延期せざるをえない人が増えてしまいました。

新規の予約にも大きな影響がありました。結婚式場を予約する際には、事前に見学や内覧を行うことが一般的です。しかし「不要不急の外出自粛」が求められる状況で、 式場の見学や内覧をあきらめる人が増え、予約が減ってしまった のです。

リモートで式場見学

ノバレーゼでは、2020年5月の緊急事態宣言の解除後に17県20カ所の施設でオンライン内覧を開始しました。 テレビ会議システムで以下の3者をつなげることで、自宅にいる利用者に、結婚式場を訪れているかのような体験を提供 しています。

  • 自宅で接客を受ける利用者
  • 自宅から接客するプランナー
  • 結婚式場の撮影担当スタッフ

ノバレーゼは2016年から、全国の式場案内を東京などの拠点で行える「出張ブライダルサロン」を行ってきました。その経験を役立てることで、オンライン内覧をスムーズに導入できたのです。
オンライン接客をZoomで行うメリットとデメリットを紹介

リアルタイム映像と写真を併用

オンライン内覧では、 結婚式場のリアルタイム映像と事前に撮影した写真を併用して、式場の魅力を伝えます。 「映像も事前に撮影しておけばいいのでは」と思われるかもしれませんが、そこにはノバレーゼのこだわりがあります。

利用者に「今は私たちのために案内してくれている」と感じてもらうことを、大切にしているのです。ノバレーゼでは他にも「待ち時間をできるだけ減らす」など様々な工夫を重ねて、特別だと感じてもらえる接客を提供しています。

ビックカメラ(家電)

家電大手のビックカメラは、2020年9月から自社通販サイトでオンライン接客サービスを始めました。すべての商品に対応しているわけではなく、特定のメーカーの商品ごとにサービスを提供しているのが特徴です。

外部サイト:ビックカメラ.com 公式サイト

ダイソンのオンライン接客サービス

ダイソンのオンライン接客サービスは、2020年10月31日までの期間限定で実施されました。提供時間内であれば予約は不要で利用できて、利用者はマンツーマンでスティッククリーナーの紹介を受けられます。

オンライン接客では担当者の説明を聞いたり、質問したりできるだけではなく、 スティッククリーナーでゴミを吸い取る実演も見られます。 スペースが限られている店舗の売り場では実演が難しい場合もありますが、スペースを確保しやすいオンライン接客ならではのメリットを活かして、実演を実現しました。

ヒューレット・パッカードのオンライン接客

ヒューレット・パッカードのオンライン接客は「ノートパソコンを始めて購入する、または買い替えを検討している方」向けのサービスです。利用者はパソコンやスマホから予約不要で接続して、ビデオ通話だけでなくチャットでも相談できます。

ビデオ通話では、 製品に詳しいオペレーターが実機を手に持って、利用者に様々な角度から見せながら機能などを説明 してくれます。使い方などの疑問点を解消できるので、利用者は安心して商品を購入できるのです。

ith(ブライダルジュエリー)

オーダーメイド結婚指輪工房「ith(イズ)」では、2020年5月にオンライン接客を開始しました。対面での細かい調整が重要と思われるオーダーメイド接客を、オンラインで実現しています。

外部サイト:オーダーメイド結婚指輪・婚約指輪のブランドith(イズ) 公式サイト

ビデオ接客でアトリエ同様の相談が可能

ithではZoomまたはGoogle Meetを利用したビデオ接客を行うことで、アトリエ(実店舗のこと)と同様の相談を可能にしました。近くにアトリエがなかったり、離れて暮らしていたりするカップルでも利用できるなど、新しい価値も生まれています。

ithは、指輪という小さな商品を説明するには一般的なパソコン内蔵のカメラでは不十分だと考え、 外付けの顕微鏡カメラを用意 しました。こうした環境整備が、高品質なオンライン接客につながっています。

サイズゲージを宅配便で貸し出し

ithでは、顧客が自分にぴったりの 指輪のサイズを確かめるために使う「サイズゲージ」を宅配便で貸し出し ています。さらに、一度の相談で6本まで指輪のサンプルを届けているので、利用者は指輪ごとに着用感を確認することも可能です。

加えてオンライン接客での成約に限り、ithではオリジナルデザインの試作リングの制作も無料で受け付けています。このように、利用者が「届いた指輪が想像していたものと違った」と感じる問題が生じないように、様々な対策をしています。

オンライン接客の成果もあり業績が回復

2020年4月には緊急事態宣言の影響もあり、ithでは売上が前年比25.9%となるなど厳しい状況となりました。しかしオンライン接客の成果もあり、 2020年6月には前年比109.9%の売上を実現 しました。

オンライン接客の導入により注目を集め、アトリエがない地域の顧客と新しい関係を構築できたことが、売上回復の一因としてあるようです。

イケベ楽器(楽器販売)

楽器の販売を行うイケベ楽器では、2020年12月からオンライン接客販売サービス「テレイケベ」を開始しました。

外部サイト:【 公式 】イケベ楽器店

1on1で楽器選びをサポートする「テレイケベ」を提供

テレイケベでは、ツールとしてZoomを使用し、対応スタッフが利用者と1対1でオンライン接客を行います。 スタッフが楽器を実際に演奏する様子を見せることも可能 なので、利用者はテキストでは伝わりにくい楽器の魅力を、リアルタイムに感じられます。

テレイケベを利用するには、前日までに専用フォームからの予約が必要です。予約制とすることにより、対応する店舗は利用者が見たい楽器の準備を整えた状態で、オンライン接客を始められます。

成約率100%を記録

テレイケベでの接客によって、2021年6月までに10人ほどが購入につながっており、 成約率は100% です。もともと購入意欲が高い人や、以前から電話で問い合わせていた人が利用しているという理由もありますが、利用者がオンライン接客に満足していることがうかがえます。

サービス開始当初、テレイケベの提供に対応しているのは2店舗のみでしたが、反響を受けて、イケベ楽器では対応店舗を拡大させています。

ハンズ(小売)

イメージ_ご自宅からスマホやPCで! オンライン相談のご案内

引用:ご自宅からスマホやPCで! オンライン相談のご案内https://shibuya.hands.net/item/online-reserve.html

株式会社ハンズでは、多様化する買い物行動に対応するために、デジタルサービスの活用を推進しています。会員向けアプリやSNSなどに加えて、2021年からはオンライン接客を開始しました。

外部サイト:ハンズネットストア 公式サイト

店内を映しながらビデオ通話

株式会社ハンズは、LiveCall(ライブコール)というツールを使ったオンライン接客を提供しています。直感的に操作できるユーザーインターフェースが特徴で、メニューと日時を選択すると予約も簡単です。送られてきたURLに当日アクセスするだけで、店舗のスタッフとつながります。

ハンズのオンライン接客は、 店頭スタッフが店内をタブレットで映しながらビデオ通話 をするスタイルで行われます。ビデオ通話ではありますが、 自宅のスペースを考えながら実際の商品のサイズ感を確認できる とあって人気のサービスです。

接客予約も実施

ビデオ通話のほかにも、 一部サービスの接客時間をWeb上で予約できるシステム も導入しています。接客予約を受け付けているのは、頭皮チェックや肌チェックなどのカウンセリングがメイン※。専門スタッフによるカウンセリングを待ち時間なくスムーズに受けられます。
※時期によって異なる可能性があります

ボルボ(カーディーラー)

イメージ_ボルボ デジタル ラウンジ | ボルボ・カー・ジャパン

引用:ボルボ デジタル ラウンジ | ボルボ・カー・ジャパンhttps://jp.volvocars.com/jp/buy/digital-lounge/

高額商品である自動車販売業にも、オンライン接客が導入されています。ボルボ・カー・ジャパンでは、2020年7月から顧客とのやりとりをオンラインで行う「ボルボ デジタル ラウンジ」を提供しています。

外部サイト:ボルボ・カー・ジャパン 公式サイト

既存顧客との商談をオンライン化

「ボルボ デジタル ラウンジ」は、 ショールームから車の全体や細部をカメラで映しながら接客 するスタイルのサービスです。

そもそも自動車販売は、商品の価格が高額ということもあり、それまでは 顧客と会って話すのが前提 でした。契約まで5回以上来店してもらうことが普通でしたが、顧客は店舗を訪れなくても接客を受けられるようになり、 成約までの負担がかなり軽減 されるようになりました。

整備や修理にもオンラインサービスを導入予定

 今後は、整備や修理などのサービスもオンライン化する予定 といいます。これまでは作業をした整備士が顧客に内容を説明してきましたが、オンライン上でも同様の説明ができるようにしていくとのことです。

自動車は、販売してからも長い付き合いが続く商品です。オンラインサービスを取り入れることは、顧客の利便性を高め、顧客満足度の向上も期待できるようになります。

オンライン接客のメリットと成功事例まとめ

オンライン接客は元々感染症対策として普及が進んだものの、非対面で接客ができることには、感染症予防以外にも様々なメリットがあります。顧客の利便性向上・商圏の拡大・業務改善・人材不足の解消などが可能です。

今現在提供されている各社の取り組みをヒントに、顧客・自社ともに幸せになれるような、新しい形の接客を提供していきましょう。

記事監修者

記事監修

津曲雄也コンサルティングセールス・ウェブ解析士

マーケティング支援ツールのコンサルティングセールスとして導入支援をおこなう傍ら、自身もオンライン商談を月に50回以上実施。その知見を活かし自身が出演するYouTubeチャンネルでも動画を数多く公開。